奨励学級 第一回 視覚情報から見出す小平のまちづくり

講師:KDDI総合研究所、英セントラル・セント・マーチンズ博士課程所属、小平市民 照井 亮 参加者22名 資料ダウンロード

小平市奨励学級紹介、講師紹介
デザインとは何か?ワークショップ実績
ワークショップ過去の写真をつかう
ワークショップ現在、社会を再考する
ワークショップ未来、地図上で議論する
小平に活かすためには

空間的正義と社会的関与のための民主的デザイン・アプローチに関する研究を行っている。

デザインとは何か?おしゃれな家具などを「作り手」が与えるものをイメージするかもしれないが、市民が自らの手で本当に必要なものを自ら考えてつくるのもデザインである。

例えば、身の回りの生活の食器の収納、家具の配置を変えるような行為もデザインと言える。「何かを改善するアクション」一連の動き(プロセス自体)がデザインと考えられると言われ始めている。

照井先生ワークショップの実績

福岡、ロンドン、エジプトのアレキサンドリアなどでまちづくりや社会づくりに関するワークショップなどの活動を行なってきた。政情不安定なエジプトでのワークショップは効果的だった。自分たちがしっかりしないと、という市民の意識が高く、社会参画における当事者意識が強く、活発な議論が出来た。逆に良い街は、市民は立ち上がりにくいのではないか、と考える

北海道の長万部町(おしゃまんべちょう)のワークショップ2年半ほど担当している。当初照井先生のワークショップに関して多くの住民は懐疑的であり、受け身であった。行政・ゼネコンが主導で都市計画を行い、住民は受け入れるだけだと考えていた人が多かったが、少しずつ変わっていった。

若い人が参加すること、当事者意識を持つこと、利害関係者が話し合いをする場を持つこと、が出来ることがキーポイント。

定量調査では、一日の人の交通量、性別、年齢層などが考慮され、住民の声を吸い上げることが出来ない。デザイナーの役割、写真をつかったワークショップの実例で、過去と現在をつなぎ、そして未来を引き出していく定性調査の手法を「長万部町」の例と共に紹介する。

長万部町の事例紹介 1.過去 写真を使い文脈を探る

図1.長万部町の地図

参加者の写真を使い文脈を探る。宿題として日常の中の暮らしの中から写真をとって来てもらう。自身の生活の記録を撮ることをきっかけに、自分の暮らしを振り返るきっかけになる。最初のワークショップで写真を持ち寄ってもらい壁に貼ることで、自然と「受け身」の視線から「参加者のプレゼンテーション」の場と時間に変わる。自分たちが街を良くするという思いが表れる。日常の写真を使うことで、参加者は先生になり、先生が生徒になる。

長万部町は2030年に新幹線が通る。行政・ゼネコンによる現状の都市計画構想があるが市民の間にも様々な声がある。

近年の人口減少により海中みこしのかつぎ手がいない中、水産業の担い手である東南アジアの労働者が率先して海中みこしのかつぎ手を担う、という素晴らしい話があった。コロナ禍で雇い止めの外国人労働者による治安悪化など負の側面を心配する地域がたくさんある反面で、多文化との共生を行なっている素晴らしい例である。また、地元の名産、メイプルシロップ、キャンプ場などさまざまな街の資産が見えてくる。役場、ゼネコンの人たちの写真は、街のレストランで食べたものからのノスタルジーを感じていた。対立の構図になりやすい役場、ゼネコンと地元の住民が共通する想いを見つけ出し、対話を始めるきっかけが出来る。

自宅に眠っている古い写真を持ってきてもらうと地域の共通の記憶を思い出すきっかけになる。

長万部の事例紹介 2.現在 私たちの社会を再考するための哲学的な構造

地域の良い部分、悪い部分、市民の意見か、行政の意見、市民の行政に対する意見。構造主義の手法でまとめる。アクタンシアルマッピングをつかった手法。

図2a アクタンシアルマッピング

図2b アクアンシアルマッピングの実例。

A:高校生、B:地元商店、C:行政、D:ゼネコンの人の意見

をポストイットしていき分析する。

デジタルホワイトボード、MIROをつかっている。修正可能なのが良い。言い過ぎ、良い足りないが後で修正できる。時間と場所に縛られないコロナ渦で発展した新しいワークショップのスタイル。

子供たち、小学生、中学生、高校生が次の世代のまちの主役、入ってもらえるような工夫が必要。役場の方達が校長先生に掛け合ってくれたり、ポスターを高校に貼らせてもらって参加を呼び掛けた。熱心な高校生が入ってきてくれて盛り上がっていった。高校生が大人と話せる場所がないという意見があったが話し合えるようになった。

A:高校生、B:地元商店、C:行政、D:ゼネコンの人の意見で貼っていくとそれぞれの事情、想い、立場の違いが見えてくる。

若い人、環境問題に敏感。例えば経済動物としての乳牛、どんどん妊娠させて牛乳を出させると、本来の寿命の前に死んでしまう。そんな事実を知ってベジタリアンになる若い人などもいる。その一方で、酪農を営む方達は子供たちが健康に育つようおいしい牛乳を届けるために、昼夜を問わず働いていらっしゃる。お互いの物語が行き違いになり、意見の交換ができる場所がないことが何よりの問題である。

新幹線の効果を楽観的に捉えている人もいるが、住民目線で考えると乗り越えなければならない課題も多い。例えば観光協会や地元商店の人々は、現状ニセコのリゾートの乗り換え中継地の1-2時間の滞在場所から、1泊してもらう場所に変えるには何をすれば良いのか?雇用をどう作り出すか?地域の価値をどうやって再構築するか?それぞれがそれぞれの立場で真剣に考えている。

年に一度の毛がにまつりでは、かつて1000人パレードやマラソン、力自慢大会など市民が参加できる様々なコンテンツがあった。今は、毛ガニを食べてお酒を飲むだけの場になってしまった。運営する側にも考慮すべき事情があり、予算(補助金)・人を割り当てられないという意見が出てきた。

長万部の事例紹介 3.未来 地図上に抽象的な議論を展開する

意見を、地図上に再配置する。

図3 意見の地図上での再配置

地図上で公共施設の使い方に関する議論も紹介された。図書館、公共施設の使い方、WiFiが使えると若い子達が携帯でゲームをやるたまり場になってしまいがちだ。想定の使用方法と異なるとの声がある一方、住民の親からは安心して(特に厳しい冬季)子供が集えるという意見が出て悪いことではないという認識になった。

地産地消の給食がまずくて評判が悪いのだが、学生と生産者が共有する場がない。役場の課長が給食を食べる会を提案した。漁業、水産業、酪農、調理者、高校生、その親が同じものを食べることで、それぞれの想いを共有できる場が給食の再デザインに取り組むきっかけの場になるのではないか。

郷土博物館、意外に良いものがある。スポットがあたっていないのでは?という話もでる。誇りをもって自分たちのことを話せない。地域の歴史を学ぶことで住民が誇りを持てるようになる。

地図に物語を載せていくことで未来に向けての議論が出来るようになった。

様々な立場の人が交流会(飲み会)の場に私服で参加するところまで来ている。まちづくりの中での力学の変化が起きている。

環境と人間性のフィードバック

自分が自分自身であるという認識としての「自己の物語」と、外界とのインタラクションの第一歩である身体性から自己の存在の再認識が始まる。自己の物語と、環境的要因-何故小平に住んでいるか、周囲の環境、コロナ渦で小平にとどまっている時間がながくなり、人々のつながりとしての「その環境におかれる自分」がある。人は「自分の物語」と、「自己を取り巻く環境」とのせめぎ合いの上になりたっている。

図4 人間の再定義、個人の物語と環境から

まちづくりのレベルと小平市のまちづくりのヒント

民主的なまちづくりのレベルには1969年には、4段階あると言われていた。今も変わらない。

  • 行政からの告知だけの段階
  • 住民説明会は実施する段階
  • 住民と行政が一緒にまちづくりするパートナーシップの段階
  • 市民に権限移譲する段階

民主的なまちづくりを小平市ですすめるためには、どうすれば良いか?

小さなまちづくりの団体が集まれば変わる。武蔵野美術大学の先生や学生など大学を巻き込んでまちづくりに活かしていくのも活性化の手、次世代を担う若い人が参加できる機会をつくることが第一優先である。

テーマ設定を行政・オーソリティが行うのではなく、市民が参加を通して自分達で考えて決めることが大事。

開催場所も重要。小平中央公民館は良い環境。中庭があり、メダカがいる。お子様をつれたお母さんがいる。NGなのは教育機関でやると教える- 教わるの関係が自然と出来てしまうので自主的な参加にならず、受け身になってしまう。市役所の会議室も良くない。いつもの行政の説明会のようになって身構えてしまって活性化しない。

教育機関との連携も重要。たくさん大学がある。武蔵野美術大学の基礎デザイン科、清水恒平先生、コミュニティデザイン、ソーシャルデザインの先生なので、活用してもらいたい。自分(照井先生)も小平市民なので声をかけてもらいたい。

開催時間も重要。商売がされている方、学生、商売の人、多くの人が参加できる時間帯を考えた方が良い。

関心あること、お困りごとを聞いてみることも大事。自分(照井先生)の例だと、上水本町1丁目、玉川上水の2mの橋、子供の通学で送って行っている。小さな橋を自転車降りずに爆走している高校生との接触が心配。警察、市に訴えたがたらいまわしになった。

皆さんが好きなこと、素敵なこと、自分だけが知っている事を、子供と共有する事で話し合えるきっかけをつくっていくことが大事。

質疑、参加者意見

地域が目標に向かって動き出す閾値ははあるか?

ワークショップをしても、ガス抜きの実行性を伴わない体裁のアウトプットでは変わらない。役所の人が私服で、飲み会などの気軽な場に出席し市民と交流するなどの変化があると変わる。意識が高い人だけが出てきて、いつも同じメンバーになってしまいがち若い人に参加してもらうことが重要。

MIROは誰でも使えるのか?更新履歴は見られるのか?

リテラシーは必要。投稿者が名前を書くなどのルールを作って無責任発言を防止する工夫必要。誰がいつ書いた、修正した履歴は残る

アクタンシアルマッピングの4つの分類はどう分けるのか?

上下には近い関係、対角線には異なる、対立しやすいカテゴリーを配置するようにしている。

  • 市の委員会に、公募市民で参加するとガス抜きがよくわかる。
  • 地域にある教育機関との連携は、小平市で取り組みがある。武蔵野美術大学、白梅学園、津田塾大学など交流がある。
  • 写真をつかったワークショップには共感した。インスタグラムでのアピールはわかりやすい。

感想(神尾)

デザイン=改善するアクションすべて、とは全くその通りだと思いました。長万部の仕事ワークショップは、まさにデザイナーの仕事でした。まちづくりを、どんなレベルの人も興味を持ってもらい、理解できるように示して参加をうながす、写真を使ったワークショップの改善そのものでした。

デザインはすべての仕事の改善の道具だと説得力がありました。

デジタルホワイトボードのMiroは無料でつかえるようなので、Afterコロナ以後は必須だと感じました。先生が言うところの、「改善するアクション」がデザインとすると、Miroも一つのデザインでした。

長万部町の人口予測はすさまじいものがあり、小平市から見ると考えられない危機感をもっていると思われます。

図5 長万部町の人口予測

行政も税収激減が見えている中で、ワークショップから必死に街が生きる道を模索しているのが伝わってきました。5,000人程度の小さな街の存続の危機を世代・立場を超えて街の活性化を考えようという意識があるのだろう。

お話にあった若い人たちとの市民活動への参加の取り組みは、小平市の中でも進んでいると思いました。しかしもっとやれることはあるように思いました。

図6 小平市の人口予測

相続税でやむなく売却される農地が宅地に変わり続けていることは大問題ですが、おかげで人口増加が続いていて税収も安定している小平市の行政の危機感は、長万部町ほどではないように思います。

長万部町のような危機感は持てないと思いましたが、小平市にもまちづくりの課題はたくさんあります。

照井先生が言うところに、良い街は、危機意識が低く市民も立ち上がりにくいのですが、小平市は恵まれた良い街で危機意識は低いと思いました。

とはいえ、小平市は市民主体のまちづくりの実現は、程遠いので少しずつ変えて行きたいと思います。5回の奨励学級と集まってくれた参加者の皆様と、小平市を変えていくチャンスに出来ればと思いました。

なお、講座の説明部分は、照井先生に確認修正頂きました。重ねてどうもありがとうございました。

以上(神尾)

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